川村元気『私の馬』

草原を駆ける馬 小説
  • 書籍名:私の馬
  • 著者名:河村元気
  • 出版社:新潮社
  • 出版年月:2024年9月
  • ジャンル:小説、現代文学、ヒューマンドラマ
  • ページ数:単行本152ページ

みなさんは馬に魅力を感じたことはありますか? ペットとして飼う動物としては、犬や猫が一般的に飼われることが多く、YouTubeやSNSでも可愛らしい写真や動画が回っているかと思います。 では馬はどうでしょうか?私の中で馬=競馬のイメージが強く、所有する人も一部はいますが目的は勝つ馬を育てることかと思います。 そんなよく抱かれるイメージとは異なる視点を持った主人公が、馬そのものに魅力を感じ、運命の出会いともとれるような感覚におちいりのめり込んでいく物語になっています。

この本を読んだきっかけ

この本を読んだきっかけは、著者の河村元気さんの名前に見覚えがあったからです。 (有名著者さんですが、パッと出てきませんでした!すみません🙇) 著者名を検索したところ、過去に読んだことある『億男』の著者さんだとそこで思い出しました。 読んだ当時は学生で、隙間時間にちょこちょこ読みで読み進めていたのでかなり長い期間をかけて読んでいたなと懐かしく思い、今回の『私の馬』を思い出購入しました!

あらすじ

造船所で働く40代の事務員、瀬戸口優子は、ある日通勤途中の国道で馬運車から逃げ出した黒い馬と出会う。この運命的な出会いに心をうたれ、その馬が所属する乗馬倶楽部を訪れる。 馬の名前はストラーダ、元競走馬だった。優子はストラーダに乗り一体となって駆けることで、退屈な日常から解放される感覚を味わう。 次第に優子はストラーダを自分のものにしたいと考えるようになる。そのうえで、ストラーダを乗馬の世界チャンピオンにすることを目指し始める。

その目標を達成するためには莫大なお金が必要になり、優子は組合のお金にてをつけてしまう、、、 さらに上に進めば進むほどにかさんでいく資金、、、

孤独な日常から彼女を救い出してくれた唯一の存在にすべてを捧げる。

作品のテーマや魅力

孤独と癒し

主人公が馬との出会いを通じて、心の空白を埋め、孤独から救われる過程が描かれています。 現代社会でも多くの人が感じる孤独感や、人と人とのつながりに対する共感がテーマに織り込まれています。

現実と幻想の交錯

物語では現実と幻想が混ざり合い、不思議な世界観が展開します。 馬が象徴するものがなになのかは深く語られておらず、読者ごとに異なる解釈を持つことがで切ると思います。

印象に残ったポイント

映画のような世界観

幻想も交えた不思議な世界観に詩を詠んでいるような感覚が相まって、舞台や映画を見ているような印象を受けました。 映画プロデューサーとしても活躍している川村元気さんならではの表現が込められていると思います!

おわりに

個人的に感じたこの作品の特徴としては、読者に多くを考えさせることだと思います。 基本的に言葉を発することのない主人公とそもそも喋ることのできない馬とのコミュニケーション。仕草や行動には現れていますが、そのほか多くは読み解いて補う部分だと感じました。

多種多様な受け取り方ができる作品だと思いますので、ぜひみなさんなりのイメージを追加して楽しんでみてください!

【ネタバレあり】推しシーン

御子柴の存在

私的には「お局」のようなポジションで登場してきた御子柴で最初の印象は嫌味なやつ、邪魔者のようなイメージで読み進めていたのですが、だんだんと魅力を感じるようになりました。 最後のあたりにはなぜか御子柴あっての主人公の今とまで感じさせるほどの言葉にできないような存在感と役割を持っていたのではないかと思います!

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