- 書籍名:人魚が逃げた
- 著者名:青山 美智子
- 出版社:PHP研究所
- 出版年月:2024/11/14
- ジャンル:小説、ファンタジー
- ページ数:単行本240ページ
12時から17時の5時間の間だけ広がる歩行者天国。
その時間に現れた謎の王子を名乗る青年。
そんなテレビ中継をみたらあなたはどう思いますか?
私が昼時のニュースでそんな状況をみると「勇気のあるコスプレイヤー」などと思うはずです。
でもそれは、あまりにも大人で、現実的すぎて、夢のない感じ方なのかもしれません。
童話を読んでいた頃、冒険のワクワクや姫、ヒロインへの憧れをいだきながら見ていたことかと思います。
そのキラキラな感情を今一度呼び起こしてみませんか?
この本を読んだきっかけ
この本を手に取ったきっかけは店頭の推しコーナーにあった中でタイトルで惹かれたからです!
基本的に本を選ぶ際には直感頼りにするために深い前情報なしの上で、推しコーナー→新着エリア→単行本エリアの順に巡っていきます。
この本は一番初めに眼を通す推しコーナーにありました。
まずファンタジーを含んだタイトルで惹きつけられ、帯を読んだ時に「4年連続本屋大賞ノミネート」とありそこでまた惹きつけられ、トドメに裏のあらすじに「嘘」と「SNS」というワードが入っており購入を決めました!
現代の若者(自称)ですから現代のトレンドにはそそられるものがあり、「この二つをおさえた小説が気になる!」と感じ、レジに向かいました!
あらすじ
東京・銀座の歩行者天国に「王子」と名乗る青年が現れ、「僕の人魚が逃げた」と告げる。
この謎の宣言がテレビで取り上げられ、SNS上の銀座の街が「人魚騒動」で話題となる。
物語には、王子と出会う5人の男女が登場し、それぞれが人生の節目を迎えている。彼らは、王子の人魚を探す旅を通じて、自らの人生や人間関係を見つめ直すことになる。
王子は本当に人魚と再会できるのか、また人魚は実在するのか——。
作品のテーマや魅力
幻想的な要素
アンデルセンの童話『人魚姫』を基にしつつ、現代のSNS文化を取り入れた新しい物語で、王子と人魚というファンタジーの要素が、現実の問題と絡み合い、夢のような感覚で読み進められます。
人間ドラマ
5人の男女がそれぞれの人生の岐路に立たされ、彼らの成長や変化が描かれることで、人生の意味や人間関係の複雑さを表現しています。
ユーモアと感動
青山の独特な文体は、ユーモアを交えながらも、深い感動を与えることができるため、読者を引き込む力があります。
印象に残ったポイント
自分が本当にやりたいこと
トークショーでのやりとりで「まわりに誰もいなくても、人が見ていないときにやってしまうこと、それが本当にやりたいこと」というアーティストの言葉が印象に残っています。
シーン背景としては、やりたいことに素直な姿勢を見せる娘と比較して自分にはそこまで夢中になってやりたいことに向けられる思いがないと悲観している母親のシーンですが、私としては母親に共感できる場面だと感じました!
作品全体がそうなのですが、特にここでのアーティストの言葉というのは読者に対するメッセージとして深く伝わってきました!
感性を言語化するスキル
私は絵画やアートのような芸術作品にふれることはめったにありません。
そのせいか、感じた思いに対しての言語化能力の低さを痛感することが多々あります、、、
このブログを書くにあたってもそうですが、おそらく思っていることを文字として伝えられている度合いは30%程度だと実感しています。
そのため、この作品に出てくる人物の感性を言語化するスキルにとても魅力を感じました!
特に3章に出てくる絵画をコレクションしている人物は、普段から芸術作品と向き合っていることもあり、展示作品に対する表現、感性が細かくそそられる内容でした!
自分もここまで人を惹きつけられるような言語センスをつけたいと思う一方、言葉そのものの持つ豊かさというのも感じました!
おわりに
「人魚が逃げた」というタイトルに惹かれて読み始めた作品ですが、現代社会の風潮や個人の人生観、苦悩を表現したユーモアのある作品でした!
なおかつ、現実と幻想のバランスも絶妙で、読み終えた後には明日に向かう希望をもらうことができました!
また、書籍自体の構成としては各章人物の切り替わる構成なので意識的に読み分けしやすく、五人のストーリを追体験できる小説ならではの面白さも兼ね備えた、万人にお勧めできる作品でした!
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