- 書籍名:かがみの孤城
- 著者名:辻村 深月
- 出版社:ポプラ社
- 出版年:初版2017年5月
- ジャンル:ファンタジーフィクション、 マジックリアリズム、 心理フィクション
- ページ数:単行本554ページ
この本を読んだきっかけ
「かがみの孤城」は2018年に本屋大賞を受賞し、2022年には映画化もされた有名作品。 知ってはいましたが、当時は読書をしていなかった&単行本好きという理由で読む機会を逃してきました。そんな中で、初めて立ち寄った中古屋さんで偶然にもこの本を見つけました。 しかもこの本は包装もされており、状態の良い単行本だったので運命を感じ、6年越しの購入を果たしました。
あらすじ
学校へ行けなくなったある少女、こころ。 ある日、部屋の中で光を放つ鏡に気づき、その鏡を通じてたどり着いたのは、不思議なお城だった。 そこには、狼のお面をつけた「おおかみさま」という謎の存在と、自分と同じように現実から逃れるようにして集まった”7人”の子どもたちがいた。 おおかみさまは彼女らに城でのルールと「願いを叶える鍵」の存在についてを明かす。 なぜここに集められたのか? その理由を誰も知らないまま、それぞれの思いを胸に鍵を探し始める子どもたち。
彼らが抱える秘密や過去── 城そのものが隠していた真実── そして、その鍵を通じて知ることになる自分たちの「居場所」とは──
作品のテーマや魅力
ファンタジーと現実の融合
ファンタジーの要素である「鏡の城」や「おおかみさま」の存在が、物語に不思議な雰囲気を与えながらも、現実的なテーマを浮き彫りにしています。この絶妙なバランスが、作品の大きな魅力です。
キャラクターのリアリティ
登場する7人の子どもたちは、それぞれ異なる理由で学校に行けなくなった背景を持っています。いじめや不登校、家庭問題など、彼らが抱える悩みは現実に基づいており、読者が共感しやすい内容だと感じました。
印象に残ったポイント
1.ミステリー要素
物語全体に散りばめられた伏線が、最後に見事に回収される展開は爽快感があります。 「なぜ彼らは選ばれたのか」や「彼女らが抱える秘密」などの前提となる要素に加えて、話が線になるような「実は、、、」といった内容が多く盛り込まれているため読めば読むほど引き寄せられます。
2.それぞれの秘密や過去との向き合い
この本を通して感じたのは、なによりも集められた7人の少年少女に対する描写が細かくリアリティがあるので感情移入がしやすいということでした。 そのうえで過去と向き合う辛さや覚悟など、7人分の人生を体験した感覚になりとても感動しました。
おわりに
「かがみの孤城」は、孤独や不安を抱えるすべての人に寄り添う物語です。 こころたちの姿に共感し、他人を思いやる配慮と自分も一歩を踏み出せるような勇気をもらえる作品だと感じました。 幅広い年代の読者にメッセージを届けてくれる素晴らしい作品ですので、ぜひ手に取ってみて、こころたちと一緒に「かがみの城」を旅してみてはいかがでしょうか!
【ネタバレあり】推しシーン
マサムネ「助け合えるんじゃないか」
私がゲーム好きで内向的、慎重な性格であることもあいまって、特にマサムネの気持ちが染みるように伝わってきました。マサムネは他の誰よりも、自分の置かれた状況や他人の気持ちに対して敏感であり、周囲と自分との間に距離を置いてしまうことが多い人物です。
そのマサムネが物語中盤の転機となるタイミングで放った「助け合えるんじゃないか」という言葉には、これまで孤独に向き合ってきた彼らが、少しずつ他者を信頼し始める気持ちが込められていると感じました。
このセリフは、作品全体が伝えたいメッセージでもあると思っています。 「誰かとつながること」「誰かを信じること」が、どれほど心を救い、人生を豊かにしてくれるのかを、静かに強く読者に問いかけています。読者としても、この言葉をきっかけに、普段の生活の中で「誰かを助けたり、助けられる」という行為に改めて目を向けたくなります。
まさに読者に深い感動を与える一言です!!
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